ミニテニスの授業記録(第5時)(豊田誠一郎)

公開日: 2016年2月10日水曜日

技能の向上(用具を介したボール操作,ラケット操作)
◯ 回転がかからないで打ち返するための,動きのコツをみつける
 
 現時点の子どもたちの大きな躓きは,返球をコントロールすることにあるようだ。その中でも,「コートの奥や左右ギリギリを狙うことができない」と悩んでいる子どもが,最も多い。しかし,その次に多かった「そもそも,打ち返したボールがコートに入らない」という悩みは,チーム総体として見た時には,最大の躓きとなっているようだ。

 そこで,そのことに対して大きな躓きをもっている⬜︎君に,自身の悩みを語ってもらい,その悩みを我が事として寄り添いながら,クラス全体として課題を解決していくようにした。

   ;ギリギリは狙わないようにして,相手コートに返そうとしたけど,ほぼ上手くいかなかった。その時,ボールに回転がかかってしまって,右や左にでてしまうから。
 
 ⬜︎君の躓きは,「ボールが回転してしまう」ことにある。そしてこのことは,「相手コートに返球しようとしても上手くいかない」と悩んでいる多くの子どもにとっても,共通の躓きであった。また,「スマッシュを打っても,回転がかかって左右に行ってしまい,横のラインを越えてしまう」と悩んでいる子どもも多い。そのような子どもにとっても,「ボールが回転してしまう」ことは,共通する躓きであったのだ。故に,本時では,次のような課題を設定した。

 ボールに回転がかからないようにして打ち返すための動きのコツは?
 
 実際にタスクゲームにおいて試す前には,次のようなコツを考えた。

   ;手首をひねらないようにして打つ。ボールに当たる時,手首が上向きになるようにひねっているので,右に回転がかかってしまうから。
   ;ラケットの真ん中でボールを打ち返すといい。真ん中で打つ時は,ボールが真っ直ぐに行くことが多いから。
   ;ボールを打つ時のラケットの角度を垂直にして,強く打たない。下にした時は,ネットにかかることが多かったし,上向きにした時は,こするような感じで回転がかかることが多かったから。
   ;ラケットを大きく振らないで小さく振るといい。小さく振ると,強く降らないので回転そのものがかからないから。
 
 みんなが「納得する」動きのコツとしては,「ラケットの真ん中に当てる」「手首を固定する」ことが挙げられる。ただし,「ラケットの角度」については,状況によって異なってくるようだ。次のタスクゲームにおいて,試行錯誤しながら見出していくようにした。また,「ラケットの振り方」についても,必ずしも小さく弱いほうがよいとは限らないようである。このことについても,試行錯誤させるようにした。

 タスクゲームのコートは,ゲームコートの縦半分を使用する。コートに2人入り,相手チームの1人がサーブしたボールを打ち返させる。なお,相手チームの1人は得点係とする。得点は,相手コート内に返球できたら1点,ネットの1mほど上に張ったゴムとネットとの間をボールが通過したら2点となる。ゴムとネットの間を通過したことを,山なりのふんわりしたボールではなく,ライナーの力強いボールを返球した目安とするためである。

 タスクゲーム中に,アドバイスし合いながら動きのコツを試行錯誤していくことが理想なのだが,得点を競い合うというゲーム形式になっているため,その都度立ち止まりアドバイスしたり,動きのコツを検討し合ったりすることが難しかった。そのため,タスクゲームの途中でチームごとに,「ラケットの真ん中に当てる」「手首を固定する」などの「みんなが『納得』した動きのコツができていたのか」「どのようなラケットの角度がよいのか」「どのくらいの力でラケットを振るとよいのか」などについて検討し合う時間を設けた。次のような「対話」が行われた。

   ;これまでも,ラケットの真ん中で打つように意識していたから,真ん中で打てたような気がする。けど,手首を固定して打つのは難しいな。
   ;手首を固定するのは,ひねらないという感じなんだけど,なかなか難しいよ。そのまま真っ直ぐ打つような感じで打つといいかもしれない。
   ;やっぱりラケットを大きく振ると,回転してしまってコートに入らないことが多かったので,大きく振らずに小さく振るといいと思う。
   ;でも,コートの奥に来た時は,小さく振るだけではコートに届かない。その時は,大きく強く振らないと。ただ,その分,回転してしまってアウトになることも多いよ。

「ラケットの真ん中に当てる」ことについては,「納得」したことを,「実感」している子どもの姿があった。ただ,「手首を固定する」するということは,理屈では分かるのだが,実際にプレイしてみると,なかなか難しいようだ。このチームでは,「そのまま真っ直ぐ打つような感じがいいのか」と,そのための感覚の部分で,「実感」していたように思う。「ラケットの振り方」については,「基本的には小さく振るとよいのだが,後ろに来た場合は大きく振る必要があった」と「実感」していたようだ。ただし,その分,コートへの返球は難しいようである。

 再度,タスクゲームを通して試行錯誤した後,全体で「対話」することにした。その場においては,次のような「対話」が行われた。

T  ;⬜︎君,実際に試してみて,ボールの回転はどうだった。
   ;前よりはよくなったと思うけど,手首をどうしてもひねってしまってうまくいかないことが多かった。
   ;固めた感じはどうかな。
   ;手首を押し出すようにすると上手くいったよ。
   そんな感じでやってみると上手くいくかもしれない。
 
 その後のゲームにおいては,「手首を押し出すような感じ」「手首を固めたような感じ」でラケットを振ろうとする⬜︎君の姿があった。

 ゲーム後の振り返りでは,「打ちやすいサーブだったら,回転せずに打ち返す時は増えたけど,打ちにくいサーブの時は難しい」「足元や胸に来たボールや利き手の反対に来たボールが難しい」などの新たな躓きがでてきた。次時への課題につなげたい。また,「ラケットの角度」や「ラケットの振り方」については,十分に検討することができなかったので,授業後に振り返った。
  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A

0 件のコメント :

コメントを投稿